いらない土地を国にあげる制度「相続土地国家帰属法」

空き家

相続した不要な土地を手放せる?注目の「相続土地国庫帰属法」を解説

今回は、2023年に施行された新制度「相続土地国庫帰属法」について、分かりやすく解説していきます。

「相続で土地を受け継いだけれど、使い道がなくて困っている…」「売りたくても買い手が見つからない…」そんな方にとって、まさに注目すべき制度です。ぜひ最後までチェックしてみてください。


日本に広がる「所有者不明土地」の問題

以前の記事「空き家問題の深刻化」でも紹介しましたが、日本では、所有者が分からず放置された土地が、九州の面積に匹敵するほど存在していると言われています。

老朽化した空き家や不法投棄の温床になっているこれらの土地は、再開発が難しく、行政も税金を徴収できないといった問題を抱えています。こうした背景を受けて、国は問題の解消に向けた新たな対策として「相続土地国庫帰属法」を制定したのです。


相続土地国庫帰属法とは?

この制度は、相続などで取得した土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる仕組みです。

従来は「不要な土地だけを相続放棄する」ことはできず、すべての財産を一括で放棄しなければなりませんでした。しかし、この新制度により、相続後であっても“不要な土地だけ”を国に返すことが可能になります。

ただし、利用には厳しい要件や費用があるため、どんな土地でも簡単に手放せるというわけではありません。


制度を利用するメリット

不要な土地を合法的に手放せる

相続した土地の管理に困っていても、これまでは手放す術が限られていました。この制度を使えば、売却もできず活用もできない土地を、国が引き取ってくれる可能性があります。

管理・維持費の負担から解放される

土地を所有しているだけでも、固定資産税や草刈り・境界の管理など、さまざまなコストが発生します。国に引き取ってもらうことで、こうした負担から解放されるのは大きなメリットです。


利用するための要件(人と土地)

【人の要件】

制度の対象となるのは、「相続などにより土地を取得した人」に限られます。すでに自分で所有している土地を手放すことはできません。

また、共有名義の土地については、原則として共有者全員の同意が必要です。ただし、その中に1人でも相続をきっかけに取得した人がいれば、他の共有者にはこの要件が適用されなくなります。


【土地の要件】

以下のような土地は、国への引き取り対象外です。

  • 建物が存在している土地
  • 抵当権・地上権などの権利が設定されている土地
  • 通路や他人が使う予定の土地
  • 汚染されている土地(特定有害物質あり)
  • 境界が不明確な土地
  • 崖地で管理に多大な費用がかかる土地
  • 構造物や車両、樹木などが放置された土地
  • 地中に埋設物がある土地
  • 隣地との争いがないと管理できない土地
  • 管理や処分に著しく費用や労力を要する土地

※これらすべてに該当しないことが必要です。政令・省令により細かい基準が今後定められます。


注意点|「無料」ではない

制度の利用には、土地1件あたり10年分の管理費相当額(おおむね数十万円〜)を「負担金」として納付しなければなりません。

つまり、完全に無料で土地を引き取ってもらえるわけではないという点には注意が必要です。


手続きの流れ

  1. 法務局に承認申請
     必要書類を提出し、所定の申請手数料を支払います。
  2. 審査(実地調査を含む場合あり)
     法務局が申請内容と現地の状況を審査します。
  3. 承認通知 or 却下通知
     要件を満たせば承認通知、不備があれば却下通知が届きます。
  4. 負担金の納付(承認から30日以内)
     納付がない場合は承認が失効します。
  5. 土地の国庫帰属が確定
     国が所有者となり、あなたは管理義務から完全に解放されます。

まとめ|この制度は「最後の手段」として検討を

相続土地国庫帰属法は、今後の所有者不明土地の増加を防ぐための画期的な制度です。しかし、実際の運用には厳しい条件や費用が伴い、誰もが簡単に使えるものではありません。

特に、制度の対象となる土地が限定されており、「せっかく申請しても承認されなかった」というケースも多くなると予想されます。加えて、10年分の管理費を一括で支払う必要があるため、費用対効果を慎重に見極める必要があります。

もし「この土地は相続したくない」「でも、手放すには条件が厳しそう」と感じる場合は、まず不動産買取サービスに相談してみるのも一つの手です。
不動産買取なら、制度よりも柔軟に対応してくれる可能性が高く、スピーディに手放すことができます。

制度の利用を検討しつつも、「売れる可能性があるかどうか」も同時に見極めて、後悔のない選択をしましょう。

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