今回は、古くなった家がなぜ売却しづらくなるのか、そしてどうしても手放したいと考えたときにどのような選択肢があるのかについて解説します。
マイホームの購入は、多くの人にとって人生の夢のひとつ。しかし「多少古くても売れば買い手はつくはず」と楽観的に考えてしまう人も少なくありません。確かに、条件の良い物件であればスムーズに売却できるケースもありますが、現実はそう甘くはありません。
少子高齢化と人口減少が進行する日本では、空き家が年々増加しており、「手放したくても手放せない」という問題が各地で起きています。例えば、結婚した夫婦の双方が一人っ子でそれぞれ実家が持ち家だった場合、その家庭だけで2軒の空き家が将来的に発生する可能性があるのです。こうした背景から中古住宅の供給過多が進み、築年数が経った物件は、よほど条件が良くない限り、買い手を見つけるのが難しくなっています。
つい最近も、タレントの松本明子さんが空き家になった実家の維持費に25年間で約1600万円もかかったとテレビ番組で告白し、大きな話題となりました。これは決して他人事ではなく、多くの人にとって現実になり得る問題なのです。
今回は、古い家が売れにくい理由と、手放すために取れる現実的な方法をご紹介します。
なぜ古い家は売れにくいのか?
空き家を抱えて悩んでいる人にとって、「売れないかもしれない」と不安になるのは当然のことです。ただ、築年数が経っている家でも、売却できる可能性はゼロではありません。しかし、築浅の物件と比較すると、古い家はどうしても買い手がつきにくくなるのが実情です。
以下に、古家の売却が難しいとされる主な理由を挙げます。
1. 耐用年数を超えて価値が下がっている
建物には「耐用年数」という概念があります。これは税務上の資産価値を示す目安で、木造住宅であればおよそ22年とされています。築20年を超えた物件は、この耐用年数を超えたとみなされ、不動産の資産価値が事実上ゼロになるため、買い手から敬遠されるのです。
耐用年数を超えたからといって家が住めなくなるわけではありませんが、市場では「価値のない建物」として扱われやすいのが現実です。
2. 再販で収益を見込めない
不動産買取業者は、仕入れた物件をリフォームして再販することで利益を得るビジネスモデルです。ところが、築30年以上の家になると、修繕箇所が多すぎて再販のためのコストがかかりすぎたり、そもそも売れないリスクがあるため、買取を断られるケースが増えます。
築年数の経過した家は、仲介でも買取でも、販売活動が非常に難しいと覚悟しておく必要があります。
どこからが「古い家」なのか?
一般的には、築20年を超えると中古市場では「古い家」と認識されるようになります。木造住宅の耐用年数が20〜22年程度であることが基準になっており、築20年を過ぎると建物の評価は大きく下がります。
さらに築40年を超えると、市場価値はほぼゼロと見なされます。どんなに丁寧に使われていても、築年数の古さは建物の評価に大きく影響するのです。
古い家でも売る方法はあるのか?
築年数が経過した家は売れないと感じてしまいがちですが、必ずしもそうとは限りません。ポイントは「誰に相談するか」と「どの方法を選ぶか」です。
買取業者を見極める
すべての不動産買取業者が古い家を対象にしているわけではありません。築年数が古い物件を専門的に扱う業者や、再販ノウハウのある業者であれば、他社で断られた家でも積極的に買取してくれるケースがあります。
「1社に断られたからもう無理」と諦めずに、複数の業者に相談してみましょう。買取実績を確認し、築30年以上の家の取引事例があるかどうかもチェックポイントです。
中には訳あり、事故物件などの空き家でも買い取ってくれる不動産買取業者なども存在しています。全国展開ではあまり見かけませんが、地域特化がたではチラホラ存在するため、地域でリサーチも大切です。
買取以外の売却方法
買取が難しい場合でも、仲介などで売却する工夫はあります。以下に、古い家を手放すための現実的な方法をいくつか紹介します。
古家付き土地として売る
古家を解体せずに「古家付き土地」として売却する方法です。この場合、土地を目的とする買い手や、安価に家を手に入れて自分でリフォームしたいと考えている層が対象になります。
注意点としては、買主から「解体費用を値引きしてほしい」と言われるケースもあるため、価格設定は慎重に行う必要があります。
リフォームして売却する
見た目や機能を改善することで買い手が付きやすくなる可能性もあります。ただし、築年数がかなり経過している家に高額なリフォーム費をかけた場合、費用を回収できないどころか、赤字になってしまうリスクもあります。
リフォームは、立地や需要を見極めたうえで行うべきでしょう。
解体して土地として売る
建物がネックになっているのであれば、いっそのこと解体して土地だけを売り出すという手もあります。ただし、解体費用が先に発生するうえ、家を解体すると固定資産税が高くなることにも注意が必要です。
売れ残った場合のリスクを考え、「古家付きで売り出して交渉があれば解体対応する」というスタンスの方が現実的かもしれません。
まとめ
築年数が経過した家は売却が難しくなりがちですが、決して売れないわけではありません。ポイントは、物件の特徴を理解し、適切な売却方法を選ぶこと。特に買取を希望する場合は、築古物件に強い業者を探して相談するのが重要です。
空き家の管理に高額な費用がかかる今、「売れるうちに手放す」という選択肢が現実的な判断といえます。市場価値が残っているうちに、できるだけ早く行動に移すことをおすすめします。
不動産は「持っているだけで負担」になる時代です。「いずれ売る」ではなく「今売る」を意識して、損のない選択をしていきましょう。
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